サーキュラーエコノミーとは、これまで廃棄されていたものや、活用されていなかったものを、「資源」と捉えることで、リサイクルシステムをビジネスに取り入れ、環境にも経済にも、持続可能性を持たせるという、新しい経済活動です。
地球資源の枯渇や環境汚染が、深刻な状況の中、これからの社会に不可欠な新しい経済成長のモデルとして注目を集めています。
ぜひ、このサーキュラーエコノミーについて理解を深めていきましょう。
サーキュラーエコノミーとは?
現在、限られた資源を有効に使って、環境への影響を削減しつつ、経済活動を拡大するための、社会制度や技術開発、経営戦略の取り組みが検討されています。
2010年に、欧州連合が掲げた経済についての、10年戦略では、7つの主要の取り組みの一つとして、EUの資源効率化に関する取り組みが設定されました。
資源効率を高めるには、リユースやリサイクルで、資源を繰り返し利用することが重要で、それまでの大量生産、大量破棄型の、「リニア・エコノミー」からの脱却を目指して、サーキュラーエコノミーが提唱されました。
その後、2015年に、欧州委員会が採択した、「サーキュラーエコノミーパッケージ」では、廃棄物のリサイクル率の将来目標とともに、サーキュラーエコノミーの実現に向けた、行動計画が示されました。
その中で、リサイクルや廃棄物処理にとどまらず、資源効率を高めるための生産技術や製品設計、消費者の購買に関わる、54の行動目標が示されています。
サーキュラーエコノミーは、モノの循環にとどまりません。
循環をベースとして成立する経済が本来の目的であり、国の補助金など、外部からの後押しでモノを回るのではなく、市場経済の中で、モノが回ることで、新たな産業が生み出されることを目指しています。
サーキュラーエコノミーのこれから
欧州委員会は2019年3月、サーキュラーエコノミーの行動計画について、3年間の総括を発表しました。
総括では、前に掲げた54の行動目標に対して、どのような取り組みが実施されたかが、説明されています。
実施した取り組みとして挙げられるのは、「数値目標の達成」というよりは、「プロジェクトに着手」「組織の立ち上げ」「ガイドラインの発行」といったものが多くなっています。
これは言い換えると、「サーキュラーエコノミーとは何か?」「どのようにサーキュラーエコノミーに参加し、実施していけばいいか?」という仕組み作りをいいます。
このように、いくつかの組織が発足、そして取り組みを実施することで、サーキュラーエコノミーを担う事業者がどう評価されていくかという環境整備が整っていくことでしょう。
新しいビジネスモデル
サーキュラーエコノミーとは持続可能性が重視されるこれからの時代の新しいビジネスモデルと紹介してきました。
それは、環境への負荷を軽減するだけでなく、ビジネスの在り方そのものの変化を意味することになります。
今後、どのような市場が作り出されるのか、新しいビジネスモデルとともに紹介していきます。
これまでのビジネスモデルとの違い
従来のビジネスモデルは、製造物を消費者に販売することを中心としています。
廃棄された後、回収された一部を、リサイクルするという流れでしたが、サーキュラーエコノミーでは、資源を回収、再生、再利用し続けることで、大量生産や大量消費の限界を超え、資源制約からの解放を実現します。
世界的にみて、このようなことが進んでいるのは欧州ですが、日本でも急速に注目を集めています。
その理由として、
「資源供給の制約」
「消費者意識の変化」
「テクノロジーの発展」
の3つが挙げられます。
地球資源にも限界があることは、承知の事実で、2050年までには現在埋蔵している資源では、まかないきれないとみられており、これまで以上に、資源効率の優れたビジネスモデルが求められています。
また、消費者もモノを所有することから、利用して、利用することから得られる成果をシビアに判断する消費者が増えています。
自分たちの利用シーンにあった、欲しいものだけを選ぶようになっています。
いわゆる、わがまま利用ですが、特に若い世代には、シェアすることへ抵抗がないという傾向が顕著になりつつあり、製品を売って終わりというビジネスでは立ち行かなくなっています。
最後に、IoTやAIをはじめとするテクノロジーの発展により、ユーザーの興味や行動に関するデータを、低コストで入手しやすくなり、それをビジネスにつなげることが可能になりました。
ビジネスの在り方そのものの変革を受け入れ、企業が持続的に成長するための新しいビジネスモデルへ対応することが、とても大切な意識だといえます。
5つのビジネスモデル
では実際に、どのようなビジネスモデルが企業には求められるのでしょうか。
株式会社アクセンチュアが500社以上の、事例から特定した5つのビジネスモデルを紹介していきましょう。
1つは、「製品のサービス提供」です。
消費者は、必要な時だけモノを使い、使った分だけ利用料を払うことで、モノを所有する必要がありません。
企業は、販売することより、サービス料として従来以上の利益を上げることも可能といいます。
2つ目は、「シェアリング・プラットフォーム」です。稼働率が低いモノや設備を、幅広く宣伝、シェアすることで、活用することも可能になります。
3つ目は、「製品寿命の延長」です。自動車や電気機器は先ほどのシェアリングによって、稼働率が上がります。
これらのモノは、例え高価格でも、長持ちする素材を使うほうが、より高い利益率を見込める可能性が高いです。
4つ目は、「回収とリサイクル」です。
日本は比較的にリサイクルが進んでいる国です。今はまだ、法令だからと義務的に行っていますが、消費者の利用シーンに合わせて、より高い付加価値をもたらすアップサイクルを実現することが求められています。
最後は、この回収とリサイクルを前提に、製品の設計、製造段階から、回収や再利用しやすい素材を選ぶという「循環型サプライ」というニーズが高まります。
このようなビジネスモデルにより、資源の代替えや、捨てられた素材の回収、使われていない休眠資産や、まだ使える製品の活用を進めることで、無駄なものがとみに変わっていきます。
海外の取り組み事例
それでは、最後に実際にどのような取り組みをしている企業があるのかを紹介しましょう。
ミシュラン社のタイヤサービス
先ほどご紹介した5つのビジネスモデルの中で、「製品のサービス提供」の先駆的な取り組みとして、フランスのミシュラン社の「サービスとしてのタイヤ」をご紹介します。
ミシュラン社は、タイヤというものを売るのではなく、タイヤにセンサーを付けて、利用状況を取集、分析します。
利用者は走行距離という「成果」に応じ、ミシュラン社にメンテナンスを含めたトータルのサービス料を支払うというものです。
この結果、ミシュラン社は、パンク修理やメンテナンス、廃棄までバリューチェーン全体に関わることになり、再生可能な素材の導入や、利用済みのタイヤの再利用の事業も拡大傾向です。
Sinctronics社の電子機器回収事業
ブラジルのSinctoronics社は、複数の家電メーカーと提携し、製造段階からリサイクルを視野に入れ、使われている部品情報を登録したタグをつけ、機器同士が直接ネットワークでつながるようにしました。
これにより、回収後、タグの情報を読み取ることで、選別工程を自動化しました。さらに、処理し施設を製造工業に隣接させることで、リサイクル素材を円滑に提供しています。
まとめ
サーキュラーエコノミーについて、詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
2030年には、地球2に個分以上の資源がないと現在の消費は維持できなといわれています。
サステイナブルな経済を実現しなければ、今後私たちの生活を維持していくことは、難しいでしょう。
サーキュラーエコノミーの考え方は、きっとこれらの課題を解決する重要な糸口になっていくでしょう。
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