2022年度から始まる、高校の新学習指導要領において、「金融商品」や「資産形成」が加わったことをご存じでしょうか?
日本人の金融リテラシーの低さは、時々報道される、金融関連の詐欺事件に、被害を受ける人が多いことを見ても、よくわかるでしょう。
今後、子供たちが、教育という形で金融について学ぶということであれば、実は大人である私たちが、正しく学びなおす必要があるといえます。
さらに言うと、学ぶだけではなく実践者として、教えてあげる立場になりたいものです。
世界の金融教育がどのようなものか、知ると同時に、私たちが知るべき最低限度の知識も、しっかり把握しておく必要がありそうです。
日本の金融教育
金融庁のデータによると、1995年からの20年間で、アメリカの家計金融資産は3.14倍、対して、日本の家計金融資産は1.51倍です。
日本とアメリカにおいて、このように大きな差が出た理由は、いくつかあると思いますが、その1つは家計金融資産の内訳です。
中でも、現金、預金が占める割合と、株や投資信託が占める割合を比較すると、一目瞭然です。
現金・預金の割合ですが、1995年、2016年のデータを見ると、アメリカは13%から13.7%と、約2割弱が現金・預金となっています。
日本は、55.7%から51.7%、直近の2020年のデータでは54.2%と、その割合が少し増えているようです。
株式、投資信託が占める割合は、2016年時点で、日本は18.6%に対し、アメリカは46.2%にもなります。
日本とアメリカでは、預金・貯金の割合と、株や投資信託の割合がほぼ逆という結果です。
確かにアメリカNYダウの推移をみると、ここ50年間35倍もの上昇率と右肩上がりです。
アメリカ国民が、株式投資や投資信託を始めるきっかけの1つになる、という理由付けにはなりそうです。
しかし日本も、アメリカほどではありませんが、日経平均は約10倍近く上昇しています。
もう1つ、日本とアメリカの資産推移の差が、大きく開いている理由として、金融教育の違いがあげられるでしょう。
日本証券業協会が行ったアンケートを見ると、金融経済の教育を行った時間は、中学1・2年生へは0時間、中学3年から高校3年生へは1から5時間です。
アメリカにおける金融教育は、各州、各学校、さらにいろいろな団体において、金融教育を行っているという実態があります。
金融や経済に関する趣味レーション、ゲーム教材がオンライン上で数多く、しかも無料で公開されており、授業として取り組むことが可能です。
その内容は、貯金やクレジットカードの仕組みから、株式投資ゲーム、お金の管理、ファンドへの投資など、私たち日本人の大人でも、経験したことのないような内容です。
この現実を知るとき、金融資産の内訳に、大きな差が出るのはもはや当然で、今後この差は大きくなっていくと予想されます。
日本政府が掲げるスローガンも、「貯蓄から投資へ」へ変わり、投資への優遇措置も少しずつ浸透していますが、それでもまだまだ、諸外国と比べると改善の余地がありそうです。
世界の金融教育
アメリカ以外の、諸外国の金融教育はどうなっているのでしょう?
少しご紹介しましょう。
まずイギリスですが、2014年から公立学校のカリキュラムに、金融教育が盛り込まれ、必須となっています。
3歳から、金融と経済について学び、小学校を卒業するまでに、お金に関する社会構造の理解を目指すそうです。
金融教育が、「単にお金の計算や資産形成だけではない」という考えであることがポイントです。
フランスでは、NPOを中心に、銀行口座や投資に関する教育を実施しているようです。
最近では、ビットコインに関する授業を、カリキュラムに入れるなど最新の動向まで、盛り込まれています。
最後にアメリカです。
個人主義が発達した国であるアメリカは、「子供に金融教育を学ばせるのは当然」という理解があります。
ですから、まず大切にしているのは、パーソナルファイナンス、つまり個人のお金や計画や管理です。
自分なりの金融戦略をどうするか、それに対し、どんな情報を集めればいいかを判断する、情報リテラシーについての学習も含まれます。
そのため、個人で金融を学べる無料教材も多く用意され、子供が遊べるゲームにも、経営者が借り入れと投資をしながら、企業を発展させていくという、非常に内容の濃いものまであります。
このような質の高い金融教育により、若年層でも経済と金融に関する、リアルな理解が備わっている社会づくりを推し進めているようです。
まとめ
日本の金融教育、今後どう変化していくでしょうか。
子供達には、しっかりとした教育を施してもらいたいが、それを学校に任せっぱなし、というわけにはいきません。
家庭内においても、しっかりとそのような教育を共有し、お金について話す機会を、増やしていく必要があります。
同時に私たち大人も、教える立場として、しっかりとした金融リテラシーの習得に、励む必要があります。
※当記事は情報の提供を目的としており、投資などの行動を誘導する目的で公開しておりません。また、当記事の記載内容に関するご質問には、一切お答え致しかねますので、ご了承お願い致します。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
コメント