組織マネジメント分野において、フレデリック・ラルー氏の著書、「Reinventing Organizations」の邦訳版である、「ティール組織」が出版されたことで、一気に話題に上がりました。
そうしたムーブメントがありながら、詳しい中身は知らず、言葉だけなら一度くらいは耳にしている人も多いのではないでしょうか?
それでもここまで話題になるのは、劇的な成果を上げる会社が続々と誕生しているからです。
ぜひこの機会に、ティール組織について学び、自社の組織運営などに生かすヒントとなれば、幸いです。
ティール組織とは何か?
近年、日本の経営・組織マネジメントの分野で、話題に上がったキーワードの一つに、「ティール組織」がありますが、一度は聞いたことがあるでしょうか?
このティール組織がどうしてここまで話題になったのかというと、これまでのマネジメントの常識とは、全く異なるアプローチで、劇的な成果を上げる会社が続々と誕生している、その一言に尽きます。
しかし、その斬新な手法ゆえに、うちの会社には合わない、日本の組織では通用しないのでは、といったハードルの高さを感じているのが、実態のようです。
ティール組織を形作る、ポイントの一つ一つに注目すると、個々の要素は、多くの企業で十分に取り入れられるものです。
この記事では、ティール組織の要点を解説しながら、実践に向けたヒントもお伝えしていきます。
そもそも、この「ティール」とは一体何かというと、「青緑色」を表す英単語です。それ自体に意味はありません。
このティール組織を提唱した、フレデリック・ラルー氏が、その著書の中で組織モデルの進化の過程を、産業の発展に紐づけて5つに分類した際、レッド、コハク、オレンジ、グリーンと組織化が進化し、その5番目にあたる最新型の組織モデルを、「ティール色」で表現したことから、そう呼ばれるようになりました。
ティール組織は、進化型組織と呼ばれることもありますが、どのような形の組織か一言でいうと、
「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことができている、独自の工夫に溢れた組織」
です。
先ほどお伝えした通り、ティール組織に至るまでには、いくつかの進化が必要といわれます。
まず最初に、ティール組織に至る前の過程を解説していきましょう。
ティール組織までの5つの過程
ティール組織は、組織が進化していく過程を5つに分けています。
レッド、コハク、オレンジ、グリーン、ティールの5段階ですが、ポイントの一つに、ティール組織が、第一段階の赤組織以降の、組織の進化を内包しているということです。
いきなりこの組織が誕生するということではなく、進化の過程で、必要なエッセンスを組み込んでいった結果、このティール組織が生まれているということです。
それぞれの組織のエッセンスを、順を追ってお伝えしましょう。
レッド組織
レッド組織は、「オオカミの群れ」と表現されます。
特定の個人の力で支配的に、マネジメントされるという特徴があります。
その力に従属することで、構成員は安心を得ることができます。短期的な目線で動き、目先の利益を追い求めることで、今日明日をどう生き抜くかに焦点が当たっています。
力のある人の影響が大きく、良い意味でも悪い意味でも、依存している状態です。
コハク組織
コハク組織は、「軍隊」と表現されます。
上意下達で、厳格かつ社会的な階級に基づいて、情報管理が行われ、指示命令系統が明確な組織です。
社会的な階級に基づく役割分担により、特定の個人への依存度を減少させることが可能になり、多人数の統率も実現できます。
構成員は、安定的に継続できる組織を目指していますが、このコハク組織は、今の環境が不変でないと継続できない、という前提があるため、状況変化に柔軟に対応できず、変化や競争よりも社会的な階級が優先されるという課題をはらんでいます。
オレンジ組織
オレンジ組織は、「機会」と表現されます。
階層構造による役割分担が存在しながらも、成果を上げた構成員は評価を受け、出世できるという組織です。
コハク組織のときには、能力があっても階級により、能力発揮に限度がありましたが、オレンジ組織によって、変化を歓迎し、競争が可能になり、イノベーションが生まれやすくなっていきます。
数値化によるマネジメントも重視し、変化と競争に生き残ることが、個人としても組織としても必須となります。
そのため、人間でありながら、まるで機械のように働くという事象が生じ、人間としての幸せとは何か、という原点回帰が生まれる契機にもなります。
グリーン組織
グリーン組織は、「家族」と表現されます。
オレンジ組織のように、社長や従業員といった社会的階級は残すものの、その人らしさを表現でき、主体性を発揮しやすく、個人の多様性が尊重されやすい組織です。
単に目標を達成することだけが、良しとされるのはなく、組織に属する個人に初めて焦点が当てられます。
しかし、社長の権力がどのように組織内に分配されるかといったルールがないため、構成員間での合意形成に時間が必要な場合があり、合意形成が取れない場合に、最終的に社長の意思決定にゆだねる、ということが生じてきます。
このような制約はあるものの、グリーン組織は、オレンジ組織よりはメンバーの意見も言いやすく、風通しの良い組織運営が可能となります。
ティール組織
最後に、ティール組織ですが、「生命体」と表現されます。
組織は、社長や株主だけのものではなく、組織に関わる全ての人のものと捉え、「組織の目的」を実現するために、共鳴しながら行動をとる組織を言います。
ティール組織には、マネージャーやリーダーといった役割が存在せず、上司や部下といった概念もありません。
社長や管理職からの指示命令系統はなく、構成員全体がお互いの信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、目的実現のために組織運営を行っていきます。
そして、一緒に働く厚生委の思考や行動が、パラダイムシフトを起こすきっかけとなり、さらなる組織の進化に繋がっていきます。
ティール組織までの3つのポイント
ティール組織を形作るために、3つの共通点があると、ラルー氏は述べています。
その3つは、
「セルフマネジメント」(自主経営)
「ホールネス」(全体性の発揮)
「組織の存在目的」
です。
この3つの共通点は、「従来の組織からティール組織へと進化させる突破口である」と、言われています。
それぞれの突破口について、解説していきます。
セルフマネジメント
ティール組織における、セルフマネジメントとは、意思決定に関する権限と責任を全構成員に与え、一人一人が第三者の支持を仰ぐことなく、自ら設定した目標や動機によって生まれる力を組織運営に活用することです。
これを実現するために、3つのポイントがあります。
1つは、情報の透明化で、情報とは、パフォーマンスや給料など、あらゆる会社内の情報を指します。
2つ目は、意思決定プロセスの権限委譲です。個人の意思決定を尊重しながらも、組織的なフィードバックも届くような工夫をしています。
3つ目は、人事プロセスの明確化です。
これは、採用や退職、給料決定のプロセスが独自に明確化されており、社長や役員などの個人的な権力が及びにくいようにされています。
このような工夫をすることで、メンバー全員が、真に主体的に関われる状態を実現しています。
ホールネス
先ほどのセルフマネジメントを組織的に、より有効に機能させるためにも、メンバー全員能力が存分に発揮されていること、また個人的な不安やメンバーとの関係性の上で、気になること等に組織として寄り添うことがとても大切になってきます。
このことを、ホールネスと表現されています。
書籍で取り上げられているティール組織の中には、独自の取り組みや仕組みを工夫して、実践している組織もあります。
組織の存在目的
最後に、組織の存在目的を常に共有することが大切だといわれます。
従来型の組織において、組織が目指す方向性は、経営者やマネージャーなどのリーダーが示していくものだが、ティール組織においては、リーダーは指し示す人ではなく、耳を傾ける人と位置付けられます。
会社のビジョンや、事業、サービスは、その担い手である、社員の意思でどんどん進化すべきだという考えで、常に現実に目を向けてチューニングを続けることで、組織としての存在目的を陳腐化させない効果があるでしょう。
紹介してきた、3つのポイントですが、どれも会社内での対話が重要になっています。
アドバイスをする、個を認め尊重する、耳を傾ける、といったことは、いずれも上司が一方的に指示するコミュニケーションのやり方では成立しにくいでしょう。
ティール組織への進化は、マネジメント変革であるととともに、コミュニケーション変革であるといえます。
ティール組織の2つの形態
ラルー氏が書籍の中で、取り上げられているティール組織の内、大きく2つの形態が紹介されています。
1つ目は、社長や役員等の役職は、多少なりとも残しながら、しかし、社長や役員等が持っている権力が、経営上、影響しにくい工夫をしている形態です。特に、セルフマネジメント達成のための3つのポイントである、情報の透明化や、意思決定のプロセスの権限委譲、人事プロセスの明確化が、特徴的だといえます。
もう1つは、社内上ではありますが、社長や役員等の役職自体を持たず、先ほどの3つのポイントを実現しながら運営されている形態です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このティール組織について知ると、そのような組織を持ちたい、そのような組織の中で働きたいと、思うかもしれません。
しかし、ティール組織は、その特徴もあるように、それまでの4つの段階も内包しています。
ティール組織のような生命体を目指して、一人一人が成長するために、必要な段階であるともいえるかもしれません。
働き方改革などにより、仕事のやり方、働く環境も変化が目覚ましい現代において、自分が属する組織についても変化に対応できるような意識を持つことが大切なのではないでしょうか。
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