科学技術、特に人工知能の研究開発は、私たちの暮らしをより豊かにするものと考えられています。
シンギュラリティという新しい考えが、私たちの生活に大きな変革をもたらすとされている今、それがどのような考え方なのか、実際にどうなると予想されているのか、詳しく知らなければ、ただただ、悲観的な妄想が漂うだけです。
そう遠くない未来、きっと訪れるであろうシンギュラリティについて、それについての正しい理解と、迎え入れる心構えを一緒に学んでいきましょう。
シンギュラリティとは?
人工知能の研究や開発が進む中、シンギュラリティという言葉が徐々に、私たちの耳に入ってくるようになりました。
シンギュラリティの意味や、それがいつ来るとされているのか、注目される背景など、理解を深めていきましょう。
シンギュラリティの意味
シンギュラリティとは、AIと呼ばれる人工知能が発達し、人間の知性を超えることにより、私たち人間には予測できないスピードで、社会が変化するという考え方です。
日本語訳では、技術的特異点といわれています。
人工知能の権威と呼ばれる、レイ・カーツワイル博士により提唱された「未来予測の概念」でもあります。
コンピューターの進化は目覚ましく、すでに神経の働きをシュミレーションした、ニューロンコンピューターにより、脳内の神経細胞の働きは、一部が再現可能といわれます。
そして、20年以内には、コンピューター内のニューロン数は、人間の脳の数をけることができ、なんとコンピューターが意識を持つことが可能になるといわれています。
このシンギュラリティが訪れると、人工知能が人間を超え、地球上でもっとも賢い存在になること、人工知能が、より賢い人工知能を生み出すようになること、そして最終的に、爆発的なスピードで世の中が変化することが予測されています。
2045年問題
そのシンギュラリティは、いつやってくるのでしょうか?
このシンギュラリティを提唱した、レイ・カーツワイル博士は、シンギュラリティは、2045年に訪れるとしています。
この理由は、半導体の集積密度が18ヶ月から24ヶ月で、およそ2倍になると法則からきています。
もっとわかりやすく言うと、およそ半年から2年のサイクルで、コンピューターの性能が2倍になるということです。
とは言いながらも、実際は、2045年にシンギュラリティが訪れるかは不明ですが、いずれは起こりうる事態と考えられます。
人工知能が人間の脳を超えると、人間の生活環境は大きく変わり、これまで人間でしかできなかったことの多くが、機械にとって代わると予想されています。
どうして注目されるのか?
どうして今になって、シンギュラリティが注目されているのかは、人工知能の研究の歴史を見るとわかります。
人工知能の歴史は古く、1950年代後半に、第一次人工知能ブームと、1980~1990年代には、第二次人工知能ブームといわれています。
90年代後半には、コンピューターの性能が飛躍的に向上しました。チェスの世界チャンピオンを破ったことは記憶にあるかと思います。
2010年から、人工知能を用いたビジネスへの活用が始まり、第三次人工知能ブームが起きました。
そして、それと同じタイミングで、シンギュラリティの可能性や脅威が議論されるようになったのです。
今後は、いろいろな分野にも影響を及ぼすとされており、特に、医療、金融、情報通信、さらには軍事にも適用されていることが、予想されています。
そのため、人間の知性を超える人工知能を、いかに制御して、人類がよりよい生活をするためにどう役立てるか、という議論が活性化したと考えられます。
プレシンギュラリティとは?
シンギュラリティと同時に、提唱されている言葉が、プレシンギュラリティです。
これは、斎藤元章氏により提唱された、人工知能とスーパーコンピューターを併用した技術によって、もたらされる社会的特異点のことを言います。
このプレシンギュラリティは、シンギュラリティより早い、5~10年の間に起こるといわれており、エネルギーの無料化、不老不死、浮浪者会の実現、戦争がない世界の実現を可能としている考え方です。
2025年には、AGIといわれる、汎用人工知能もしくは、人工汎用知能の登場で、人間が担うほとんどの仕事が機械に置き換えられ、少子高齢化、労働人口減少の影響を受けることなく、高度経済成長が可能と予測されています。
このことは、企業の規模に関係なく、さまざまな労働の機械化が実現し、自社の商品開発力の向上と、マーケティング強化に向けた、経営戦略を行うことができるといわれています。
シンギュラリティにより流目される分野
シンギュラリティにより、特に変化が起きる分野がありますので、代表的な5つを解説していきましょう。
ビッグデータ分野
先ほども人工知能の歴史で紹介しましたが、2010年ごろから、人工知能を活用した分野として注目されているのが、ビッグデータ分野です。
ビッグデータとは、通常の情報管理では見過ごされがちなデータを抽出し、隠れた顧客ニーズを見つけ出す源です。
このビッグデータが、様々なビジネス活動に活用されることが期待されています。
ディープラーニング分野
先ほどのビッグデータに関連して、人工知能が利用する技術として、ディープラーニングが注目されています。
ディープラーニングとは、機械が人間の手を借りることなく、自動的にデータの特徴を抽出する人工知能の学習方法を指します。
人工知能よりも処理能力が低い、情報システムや、人間の脳では抽出・分析が難しかったビッグデータを活用できる技術として注目を集めています。
ロボット産業分野
世界的に深刻な、労働人口の減少に対する補完施策として、ロボット産業も中くされています。
すでに、製造業においては、工作ロボットの導入はなされており、日本においては、「ものづくり」を支える重要な技術として、活躍しています。
今後は、ロボットに人工知能を組み込むことで、人間によるプログラミングを必要とせず、ロボット自らが動作を自動生成することが、可能となります。
このことにより、人間が、最初の支持と目的を支持するだけで、ロボット自らが途中プロセスを考えて、実行に移すことができるようになります。
よく見かけるようになったのは、ソフトバンクが開発した「papper」ですが、受付の省人化を実現し、人件費の削減だけではなく、クーポンの配布や、安価な商品の発売を可能にし、売り上げの向上に役立つと期待されています。
ナノテクノロジー分野
ナノテクノロジーは、膨大な量の情報を指先ほどのマイクロチップに収めることを可能にする技術です。
理論上では、細胞レベルまで小型化した機械を、生物の体内に組み込むことも可能だとされています。
このナノテクノロジーにより、超小型化された人工知能を体内に組み込み、生物学上の限界を超えた能力が発揮できるといわれます。
様々な病気や環境変化に、耐えることができる肉体を、手に入れることができると考えられています。
IoT分野
IoTとは、パソコンやサーバー以外のモノに、インターネット接続を行い、相互に情報をやり取りする技術です。
私たちの生活を取り囲む、ありとあらゆるモノに、情報の相互通信を可能にすることで、より豊かで快適な暮らしを実現できます。
このIoTには、人工知能の存在が欠かせません。なぜならば、IoT化されたモノが収集、蓄積したデータを、人工知能が適切に分析、指示をしてこそ、成り立つサービスだからです。
また、この収集、蓄積したデータは、ビッグデータとして、マーケティングや自社開発能力の向上へ役立てることができます。
シンギュラリティの可能性
私たちの身の回りを見ていると、自動車の自動運転や、介護ロボットの実用化も進んでおり、もうすでに人工知能の恩恵をうけていることは、周知の事実です。
さらに、どんどん研究開発が進んでおり、今後も様々な分野でこれまでの常識を覆すような変化が訪れることでしょう。
一方で、シンギュラリティがもたらす可能性には、様々な意見や指摘が存在することも事実です。
労働力の削減
シンギュラリティの提唱者である、レイ・カーツワイル博士は、シンギュラリティの可能性に対して、楽観的な意見を持っています。
人間が担ってきた、多くの仕事が機械化、自動化され、その結果、人類は生活のための労働から解放されることになり、より豊かな生活や人生を、手に入れることができるからです。
少子高齢化が進む日本においても、特に注目されているのは、労働力の低下を阻止する、画期的な解決法であるためです。
社会問題化している、長時間浪々や過労死の解決策としても、シンギュラリティがもたらす、機械化、自動化による、労働力の削減はとても魅力的だといえます。
新しい社会政策
ベーシックインカムという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、就労や資産の有無、性別や年齢に関係なく、無条件に最低限の所得を支給するという、社会政策の構想の一つです。
楽観的に考えると、人工知能の発展の恩恵として、労働からの解放という点があります。
逆に、悲観的に考えると、人工知能の人々の仕事が奪われ、生活保護を求める人が増加し、それにより、ベーシックインカムの導入が避けられないというものです。
人工知能による労働力の削減は、人類に幸せをもたらすか、それとも不幸をもたらすか、その見通しを立てにくいこともシンギュラリティ特有の不確実性が、要因になっていると考えられるようです。
シンギュラリティへの悲観論
シンギュラリティに対して、楽観的な考え方がある一方、悲観的な考えを訴える人もいます。
そのような人は、シンギュラリティが訪れた際に、どのような世界が実現しているか、全く予想できないために、人間が機械に支配されるのではないかといった、悲観論を唱えます。
すでに発表されている、映画や小説にも登場しますが、意思を持った機械の反乱や、倫理に反するような人造人間の誕生をみると、より現実味が増してきたといえます。
それらが発展し、軍事問題に発展する可能性もあります。
人工知能に関するガイドラインの必要性も叫ばれており、人間が担う仕事を機会に奪われ、失業率が悪化するといった懸念や指摘も、悲観論を作る要因となっています。
シンギュラリティがもたらす影響
ここまで紹介してきた通り、シンギュラリティは、人類にさまざまな影響を与えます。
中でも、人工知能がもたらす、労働問題については、たびたび議論のテーマとして取り上げられています。
具体的に、将来なくなる仕事や、それでも必要とされる仕事があるので、それらを紹介していきましょう。
10年後なくなる仕事
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英オックスフォード大学で、人口知能の研究を行う、マイケル・A・オズボーン准教授が衝撃的な論文を発表しました。
その内容は、702の職種すべてにおいて、今後どれだけコンピューター技術によって、自動化されるかを分析し、10年後なくなる仕事が何であるかを示したのです。
販売員や事務員、銀行の融資担当まで、特に知識やスキルを必要としない定型的な仕事、体系的に物事を処理する仕事が、人工知能へと転換されていく可能性が高いと指摘しています。
しかしながら、人間を相手にする仕事については、人間がどこまで人工知能を受け入れられるかがカギとなっており、人工知能によって、代替が難しい仕事があることも事実です。
これから必要とされる仕事
先ほどお伝えした、10年後なくなる仕事がある一方、オズボーン教授が、人工知能への代替が難しいと述べている仕事もあります。
それは、社会性、創造力、臨機応変さが求められる仕事です。
一部を紹介すると、カウンセラーやコンサルタントといった、抽象的な概念に基づく考え方が必要な仕事、芸術関係や学問関係の仕事です。
また、スポーツ選手やタレント、ミュージシャンなどのショービジネス関係、介護福祉、接客業、医療など、ホスピタリティ性が高い仕事も、人工知能への代替が難しいでしょう。
その他にも、シンギュラリティによって、新しく生み出される仕事もあるようです。
それは、人工知能を搭載したロボットを、教育、運用する仕事です。
人工知能は将来的に、自らをアップデートし、人間によるプログラミングを必要としなくなると、考えられています。
とはいっても、人工知能に柔軟な考えを持たせ、人間に危害を加えることを防ぐ必要もあります。
そういう意味では、人間が人工知能やロボットを、統制管理する作業が必要になると考えられます。
そのような仕事は、これまでにない新しい分野の仕事として、必要になってくるでしょう。
まとめ
将来のことを創造し、どのような未来が私たちを待っているのか考えることは、とても楽しいことです。
しかし、今回のシンギュラリティについて、ご紹介したように、私たちの生活は人工知能によって豊かになるためには、いくつもの解決しなければいけない課題もあります。
2045年問題、プレシンギュラリティの到来も、現実的になってきている今、企業だけでなく、私たち個人においても、大規模な変革に備える心構えが必要です。
シンギュラリティによる可能性や、その影響を理解して、どう人工知能を活用していくか、真剣に考えるタイミングが来たのではないでしょうか?
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