欧米を中心に広がりを見せる、シェアリングエコノミー。
日本では、2016年1月に民泊が解禁され、大きなニュースとなったことをきっかけに、少しずつ広がりを見せています。
ここ数年で大きなトレンドとなった、シェアリングエコノミーについて、詳しく解説していきます。
シェアリングエコノミーとは?
シェアリングエコノミーとは、個人が保有している、遊休資産の貸出しを仲介するサービスのことです。
空き部屋や空き家などの、目に見えるものから、料理やDIYの代行などの目に見えないものまで、インターネットを介してサービスが受けられることが大きな特徴です。
最近でこそ聞くようになった、カーシェアやシェアハウスですが、このようなシェアリングエコノミーが私たちの生活に取り入れられると、どのような変化が現れるのでしょうか。
これまでの経済形態では得られなかったメリットが、利用者にも企業にも発生すると考えられています。
まず利用者にとっては、これまでよりも低料金でサービスやモノを手にすることができます。
これは、これまで企業から受けていたサービスを、企業の仲介なしに受けることができるようになるため、中間マージンが抑えられるためです。
家事を近所の方々に依頼できるサービスや、車の持ち主と借主が共同管理という名目で、自家用車をシェアできたりと、企業のマージンを抑え、利用者同士にメリットの高いサービスを提供できます。
また、企業側のメリットとして、クラウドソーシングというシェアリングエコノミーの活用です。
これは、社外からスキルや資金を集めることを指します。
新しいプロジェクトをスタートする際、自社では保有していないスキルが必要な時や、一時期的に人どれが必要な業務が発生した時、外部の人で、そのジャンルに卓越した人に外注することで、自社で行うよりも、短期間でなおかつ、ハイクオリティーの成果が見込めるというものです。
普及の背景
このようなシェアリングエコノミーは、2008年にいわゆる民泊の仲介サービスを始めた、アメリカのAirbnb「エアービーエヌビー」が発祥とされています。
その後も、車やペットシッターなど、続々と個人間でのモノの貸し借りを仲介するサービスが登場してきました。
このようなサービスが発足し、そして普及していった背景には、インターネットやスマホ、タブレット端末の普及など、テクノロジーの発展があります。
インターネットが整備され、端末で手軽に利用できるようになったことで、シェアリングエコノミーは急速に成長しました。
また、システムを提供する側にとっても、サービスを提供しやすくなる追い風ともなりました。これまでは、専用の機械や、特別なシステムで管理されていたものが、すべてスマホ1つでアクセスできるようになり、ユーザー情報の管理もしやすくなりました。
このことこそ、シェアリングエコノミーが普及した要因といえます。
一見、見知らぬ人同士がモノを貸し借りすることは、リスクが大きいように見えます。
そうした問題に対応したのが、評価制度だといえます。
個人と個人の信頼関係構築が、このサービスにとっては、とても重要な要素となりますが、多くのシェアリングエコノミーサービスでは、ユーザー同士の評価制度が、信頼性を高めるために活用されています。
アメリカでは、ユーザーの信頼度を、これまでのオンライン活動履歴や、既存サービスからスコアかするサービスも提供されているようです。
市場規模
このように、サービスを利用する側にとっても、提供する側にとっても、多くのチャンスがあるシェアリングビジネスですが、日本においても急速に広がりを見せています。
英国大手のコンサルファームによると、2013年に約150億ドルだった市場規模は、これから20年後の2025年には、約3350憶ドルにまで達すると見込んでいます。
カーシェアリングは、カーステーションや車両数の増加で、市場規模が拡大を続けています。
法人利用も増加し、最近では自動車メーカーもカーシェアリングに参入しており、各地にある販売拠点を生かせることは、ビジネスの拡大には大きなメリットです。
民泊サービスにおいては、法人外国人による利用も多くなり、2020年には東京オリンピックを控えていることから、法整備も進み、今後も利用者は増加すると予想されます。
民泊最大手のAirbnbは、日本で世界初のアライアンス組織を設立し、多くの自治体や企業との連携も進めています。
他にも、シャアリングエコノミーによって、様々な影響が社会に起こっており、働き方やサービスの内容も大きく変化するでしょう。
シェアリングエコノミーのメリット
今後日本においても、急速に普及することが予測されるシェアリングエコノミーについて、より理解を深めるために、メリットやデメリットを解説していきましょう。
提供する側、利用する側の双方に利益がある
まずシェアリングエコノミーのメリットとして上げられるのが、提供する側の不要な所有物が、利益を生むという点です。しかも、そのための初期費用が掛からな、いという点もメリットといえます。
それまで使っていなかった部屋や家、タンスなどに眠っている衣類など、形は違えど、現状使用する予定がない所有物が、必要している人と共有することにより、資産としての新たな価値をつけることができます。
中でも、駐車場のような場所は、すでに所有していることがほとんどのため、現状のまま、もしくは少しの改修費のみで稼働できます。
利用する人のメリットとしては、シェアリングエコノミーを利用することで、これまでの同じようなサービスと比べて、安価で利用できることです。
また、個人でモノを所有するためには、購入費はもちろん、維持するための費用、場所、時間がかかりますが、そのようなものが不要となります。
そのため、ライフスタイルをシンプルにでき、結果必要でないものへの費用や時間をかけることがなくなります。
新しい消費や経済の発展を促す
このシェアリングエコノミーは、どんどん普及していくと、新しい消費や経済の発展を促すことができます。
例えば、民泊やカーシェアなどを利用すると、コストを抑えて楽しめるので、遠方へ出かける機会も増えて、現地での消費が活発になります。
一度そのように体験をして、満足度が高ければ、再度利用して、継続的な地域活性につながることでしょう。
また、仕事においても、時間の制約があり、仕事が見つからない場合、短時間でも持っているスキルを活かして、個人間で契約できれば、新しい雇用関係が成立し、働く場所が見いだせるでしょう。
これらの結果、一人一人の収入が増えるため、経済活動が活発になるでしょう。
人とのつながりができる
先ほどの2つのことからも言えるように、サービスを利用することで、多くの人と触れ合う機会が増えていきます。
利用者間でもそうですし、利用者とサービス提供者の間でも、情報の交換や意見の交換により、交流が生まれていきます。
遠方へ出かけて、現地で交流した人たちとの間に、自然と良い人間関係を築く気かけにもなります。
シェアリングエコノミーのデメリット
シェアリングエコノミーは、メリットも多くありますが、課題も含め、デメリットも存在します。それらを紹介していきましょう。
提供者、利用者間の安全と信頼
このシェアリングエコノミーを、サービスとして利用する場合、一番の不安要素は、どのような人がサービスを提供するのか、またはサービスを利用するのか、わからないという点です。
利用する側は、受けたサービスの価格と質に隔たりを感じたり、提供する側もマナーの悪い利用者により、トラブルが発生したりと、不満を抱いてしまうことも大きに考えられます。
そのようなトラブルを防ぐために、事前の登録や確認を求めることで、お互いの安全や信頼を確保することができます。
また、先ほども少しご紹介した、評価制度により、お互いが相手のサービスやマナーを評価できます。
そのようの評価システムは、信用が可視化できるため、トラブルを防止するだけでなく、サービスの質の向上にも役立っています。
保証制度の整備
近年、シェアリングエコノミーの普及に伴い、補償制度も整いつつあります。
始まったばかりの頃は特にそうでしたが、新しいサービスであるため、事故やトラブルが発生した場合、既存の保険が適応されなかったり、補償の範囲がどこまでか不明確であったりと、満足な補償が受けられないこともありました。
保険会社も、近年シェアリングエコノミー向けの保険商品を開発し、その整備もと整いつつあるといえます。
法律の整備
補償の整備がまだ整ってないことに合わせ、法律の整備が追い付いていないという点も、デメリットといえるでしょう。
サービス提供者が個人であるため、既存の事業者向けの法律がどのように適応されるのか、不明確な点があります。
また、グレーゾーンな事業やサービスも多く存在しています。
そのようなサービスを違法であると明確に示したり、取り締まる体制がまだないため、速やかに法整備が進み、誰でも安心して利用できるサービスへと発展していくことを期待したいものです。
シェアリングエコノミーのいろいろ
株式会社ガイアックスは、シェアリングエコノミー協会の理事をしています。
そこで、国内外における代表的なシェアリングサービスを5つの領域に大きく分けています。
代表的な例を挙げて紹介します。
モノのシェア
モノのシェアとして、フリーマーケットやレンタル事業が挙げられます。
物々交換やリサイクルによって、余剰な物品を流通させる仕組みを成り立たせています。
日本では、「メルカリ」をはじめとして、衣類の貸し借りやフリーマーケットが盛んです。
売りたい人と買いたい人を繋げる、ネット上のフリーマーケットとして、人気を博しています。
サービスの提供はスマホのアプリで行われ、スマホ1つで手軽に出品や購入ができます。
「airCloset」は、月額性のファッションレンタルサービスです。
プロのスタイリストが、コーディネートした洋服が自宅に届き、返却期限なし、クリーニングする必要なしと、手軽に様々なファッションを楽しめます。
「TABETE」は、株式会社コークッキングが運営する、フードシェアリングサービスです。
2018年にサービス開始したばかりですが、飲食店で、閉店時間や賞味期限などの理由で、そのままだと廃棄されてしまう食事を割安で購入できるサービスで、食品の廃棄を減らすことにも貢献できます。
「jukies」は、豊田通商株式会社が運営している、建設機械や工具類を、ネットレンタルできるサービスです。
遊休資産の活用を目指して、サービスを開始し、日本全国に150以上の拠点があり、最短で翌日レンタルが可能となっています。
空間のシェア
シェアリングエコノミーの火付け役ともなった「Airbnb」は、普段使っていない場所の貸し借りサービスとして最も代表的でしょう。
空き部屋民宿所として提供することができ、全世界で利用者が増加しています。
最近では、個人の利用だけではなく、ビジネス目的の利用も増加しています。
「スペースマーケット」も同様に、スペースのシェアリングサービスとして、1時間単位で空きスペースを借りることができたり、会議やイベントなど、様々な用途に利用可能です。
最近では、民泊事業にも参入しています。自治体の企業との連携も加速しつつあり、地域経済活性化への役割も期待されています。
「ecbo cloak」は、店舗の空きスペースを利用した、荷物預かりサービスです。
スマホにて予約、クレジットカードにて決済、多言語での対応も可能で、訪日外国人の利便性向上も期待できます。
駅構内はもちろんですが、カフェや美容院などの空きスペースも利用することが可能で、全国1000以上の拠点に導入されています。
移動のシェア
「Uber」は、移動のシェアサービスとして最も有名です。
日本では、配車できるのがタクシーのみですが、海外では、一般のドライバーが運転する車も利用可能です。
こちらもアプリで簡単に配車でき、クレジットカード決済で、直接お金のやり取りの必要もありません。従来のタクシーよりも割安に利用できます。
「notteco」は、相乗りマッチングサービスとして、ガソリン代や高速代を節約したいドライバーと、安く目的地に活きたい利用者を繋ぐというサービスです。
ユーザーが安心して利用できるよう、24時間体制で利用者のプロフィールやドライブ情報の監視やパトロールを行い、2007年に始まったサービスも、今では会員数40000人に達しています。
「コギコギ」は、自転車のシェアサービスとして、2011年に設立され、実績を上げています。
電動アシスト自転車を半日から借りられ、鍵の管理や支払いはスマホのアプリで簡単に行うことができます。
リソースのシェア
リソース領域では、多様なサービスが数多く展開されています。
ペットシッターから、家事・育児代行・DIY代行、技術の提供やちょっと何かを手伝うためのサービス、更にはお金の貸し借りまで、とてもバラエティ豊かです。
「クラウドワークス」は、仕事を依頼したいクライアントと、経験や実績を持った働き手とを繋ぎ、仕事の依頼件数は約239万件を誇ります。
仕事の開始から終了まで、すべてインターネット上で完結し、利用者は時間や場所の制約を受けずに、仕事をすることができます。
「ココナラ」は、知識やスキルのシェアサービスとして有名です。
イラスト、動画制作、音楽、ビジネス相談などと多岐にわたります。
1回500円からスキルを出品でき、利用する側も、優れたサービスを低単価で受け取ることがで、会員数はなんと70万人を超えています。
お金のシェア
シェアリングエコノミーで、今後さらなる普及が期待されるのが、金融サービスの分野です。
ソーシャルレンディングと呼ばれる、インターネットを介した金融サービスで、既存の金融機関では対応できなかった、中小企業や個人向けの融資を行うサービスです。
「マクアケ」は、株式会社サイバーエージェントのグループ会社で、日本最大級のクラウドファンディングサービスです
アイディアを実現したい人が、インターネット上でプレゼンを行い、賛同者から支援を募ることができるというサービスです。
特化型のクラウドファンディングとして、他にも、「FARM Sports Funding」があります。
スポーツ特化型クラウドファンディングで、資金調達が困難なアスリートが、競技生活を続けられるよう、サポートできる仕組みとなっています。
1回のみの都度支援、月額固定のマンスリーサポートがあります。
まとめ
インターネットを介して、個人間で余剰なもののやり取りをするシェアリングエコノミーは、日本でもどんどん広がりを見せています。
まだまだ整備が整っていないところもありますが、国内におけるシェアリングエコノミーに秘められた可能性は非常に大きく、日本政府も今後の推進に意欲的であるといえます。
こうした、シェアリングエコノミーの拡大は、既存の事業者にとっては脅威となるでしょう。
しかし、ターゲットとする顧客層の違いや、両社の強みが異なることから、事業者同士の連携も進んでいます。
このような連携が、ますますシェアリングエコノミーの普及を後押ししていくことでしょう。
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