2022年4月からの、新しい指導要領に基づいて、金融教育の授業がスタートしました。
「家庭科」の授業の中で行われるようですが、少しずつ、私たち日本人の金融リテラシーの向上に、日本政府も動き出してきました。
その背景には、ゆとりある老後生活を送るための、資産形成の重要性や、世界各国との比較の中で、金融リテラシーの低さがあるようです。
また、近年多発している金融詐欺の防止のためにも、この金融教育は欠かせないものです。
今後この金銭教育をより多くの人に実施するために、今日本がどういう状況なのか、知っておくと同時に、なぜ金融教育が必要なのか、改めて考えてみましょう。
金融教育と日本の現状
金融教育とは、一般的にお金についての教育のことを言いますが、私たち日本人にはあまりピンときません。
なぜなら今まで、このお金の教育を受けたことがないからです。
国の機関である、金融広報中央委員会では、この金融教育を次のように定義しています。
「お金や金融のさまざまな働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」もっと簡単に言うと、社会で生活するために必要な、お金に関する知識を学ぶことといえます。
実はこの金融中央委員会が公表している、「金融リテラシー調査」によると、日本人の金融リテラシーは、世界の主要国と比較して低いとされています。
日本、イギリス、ドイツ、フランスと比較した、この金融知識に関する問題によると、日本はこの正解率が最下位でした。
内容は、「金利について」「複利について」「インフレの定義」「リスクリターン」「分散投資」についてですが、確かに社会人になっても、自ら学ばなければ、わからない内容かもしれません。
こういったデータからも、私たち日本人においては、金融教育がとても大切だということがわかります。
外国の金融教育とは?
金融先進国である、アメリカやイギリスでは、この金融教育が子供のころから行われるのは、当たり前のこととされています。
諸外国の金融教育がどのようになっているのか、少しご紹介しましょう。
イギリスでは、小学校低学年から高校まで、すべての年代で金融教育が行われます。
内容は段階的に体験型の学習方法も取り入れ、より具体的、実践的な教育方法になっているようです。
金融についての知識については、「貨幣とは何か?」と、貨幣の源泉として、収入が必要であるという学習から、「その貨幣はどこへ行くのか?」と、家計の支出、税金、社会保険料などについて学びます。
また、お金を管理すること、お金を使うこと、予算を立てること、リスクとリターンの基礎知識など、資産運用についても学んでいきます。
最終的には、個人の金融行動に対して、自己責任だけではなく、家族や社会に対して与える影響には、どういうものがあるのかという、「個人の社会的責任」についても学んでいきます。
基本的な知識はもちろんですが、日本人であれば、大人でもわからないような踏み込んだ内容まで、段階的に学べるというのが、イギリスの特徴だといえます。
アメリカでも、金融教育を学ばせるのは当たり前のことです。
幼稚園から高校まで、レベルに合わせた教育環境が整っています。
どちらかというと、イギリスは政府機関が主導していますが、アメリカでは、非営利団体などンお協力のもと、専門家が講師となり、金融や経済に関する様々な情報を得ることができるようになっています。
内容は、「パーソナルファイナンス」という、個人のお金の計画や管理が中心で、様々な場面で応用できる知識を、身に着けることができる内容になっています。
このように、金融教育については、日本は諸外国と比べ、かなり遅れを取っているという印象です。
この現状を受けて、日本政府も少しずつ動いているのでしょうが、まだまだ始まったばかりといえます。
実際に、日本ではどのような金融教育が行われているのか、ご紹介しましょう。
日本での取り組み
確かに、2022年から高校の授業において、金融教育が始まりましたが、その現実は課題も多いようです。
特に、現場による内容の格差が挙げられます。
高校での家庭科で学ぶ資産形成の授業では、「家庭基礎」の2単位か「家庭総合」の4単位の中で、その一部とされているようで、教育方法は標準化されていないようです。
実際は、教員側の知識レベルや、金融教育にどれだけ熱意を持っているか、その温度差でも変わってきます。
また、外部講師を招く場合でも、講師によって内容に偏りが出ることも、指摘されているようです。
学校教育の中以外でも、金融経済教育推進会議による、金融教育の取り組みも少しずつ進んでいるようで、主に大学生や若手社会人向けの、eラーニング講座が開校されています。
その内容は、金融知識やライフプラン設計、金融リテラシーに関する基本的な内容ですが、初の試みということで、制作しているものになります。
まだまだ、イギリスやアメリカのように、確立されたものにはなっていませんが、少しずつ改善されて、私たちの生活にも浸透していく様子です。
まとめ
この金融教育は、もちろん子供たちにも必要ですが、何より私たち大人が進んで取り組むべき内容です。
日本政府が実施している、様々間優遇制度を通じて、それらをきっかけに、自分の資産を管理形成するための、正しい知識を学んでいけたらと思います。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
コメント