「買い物は、現金」
「働かざるもの食うべかざる」
「お金を貯めるなら銀行へ」
私たち日本人であれば、なんの違和感もないような言葉です。
しかし、日本では当たり前だと思われている、上記のようなことも、海外ではそうでないようです。
実際に近年では、日本人の投資や金融に対する、教育レベルの低下を不安視する声も、たくさん上がってきています。
その影響が、私たちの金融資産がどう増えているか、他国との比較でよくわかります。
長らく染みついた習慣は、なかなか抜けるものではありませんが、今一度私たちのお金に対する考え方を見つめ、より良い習慣へと、変えていく必要があるのかもしれません。
アメリカ人の預貯金が少ない理由
金融庁の資料に、日本、アメリカ、ユーロ圏における、「家計の金融資産構成」があります。
その資料では、国ごとのお金に対する考え方が、とてもはっきりと分かります。
まず、家計における現金・預金の割合です。
日本は、52.5%に対して、
アメリカは、13.1%、ユーロ圏は、33.0%。
金額がどれほどかは別にしても、日本人は自分の金融資産の約半分を、現金・預金で持っているということです。
一方アメリカは13.1%、どうして、アメリカは現金・預貯金の割合が、こうも低いのでしょうか?
これだけ現金が少ないとなると、「急な出費があったらどうするの?」私たち日本人は、こういう思考になってしまいます。
この理由は、私たち日本人とアメリカ人の、生活環境を見ればすぐにわかります。
今年に入って日本では、急にモノの値段が上がっています。
理由はいろいろとありますが、ほとんどは、モノ不足による価格上昇でしょうか。
テレビやネットでも情報が流されるため、私たち国民は、慌てて買いだめしたり、買い渋りしたり、このモノの値段に翻弄されています。
一方アメリカはどうでしょうか?
実は、アメリカに行くと、今週と次の週のランチの値段が変わっている、という現象は日常茶飯事のようです。
アメリカは、モノの値段は日本よりも、上昇傾向にあるということ、そしてそれをアメリカの人々は、あたりまえだと思っています。
このことを考えると、アメリカでの現金・預金の割合が低い理由がよくわかります。
なぜならば、今年と同じ金額のお金を持っていては、来年同じものは買えないからです。
モノの値段が上がっていくので、資産価値が変わらない現金や預金をしていては、自分の資産はみるみる減っていくことになります。
このことを、アメリカの人々は生活の中から実感し、ではどこに、自分の資産を置くべきかを理解しているのでしょう。
日本とアメリカの株価の推移
先ほどの、「家計の金融資産構成」のデータを再度見ますと、投資信託、株式等の割合は、
日本は、
投資信託4.0%、株式等10.9%、
アメリカは、
投資信託11.8%、株式等36.2%、
ユーロ圏は、
投資信託9.6%、株式等19.2%
と、現金・預金の割合とは、真逆の結果になっています。
私たち日本人は、先日の2000万円問題など、将来の不安は誰もが抱えています。
そのためにしていることといえば、まさしく「貯金」です。
新型コロナウイルス感染症による、国からの給付金もきっと、使わずに貯金した人が多いのではないでしょうか?
しかし、将来の不安は、きっとアメリカやユーロ圏の人々も同じはずです。
何が違うのかというと、同じ問題を抱えていて、それに対して行う対策が大きく違うのです。
先ほどの、モノの値段が上がることが、当たり前と考えるアメリカにおいて、人々がとっている行動は、モノの値段と同様に資産価値が上がってく、投資信託や株式に資産を移しておくことでした。
私たち日本人からすると、「投資は怖くないの?」と思いがちですが、アメリカの人々からすると、黙っておくと自然とその価値が減っていく、現金・預金にお金を置いておいた方が、「怖くないの?」ということでしょうか。
このように、アメリカやユーロ圏の人々は、投資することを、
私たち日本人のように、
「お金を増やしたい」
「老後のための対策」
という理由ではなく、
「お金を減らしたくない」
という理由から、投資しているということが、はっきりとわかります。
そしてもう一つ、その投資への行動を後押しする理由をご紹介します。
それは、日本とアメリカの経済成長の問題です。
実際にアメリカは、1980年以降も常に経済成長は進んでいて、それに伴って国民のお給料も上がっています。
もちろん、リーマンショックなどで、一瞬落ち込むということはあるにしても、すぐに立て直し、長い目で見ると常に上昇を続けています。
逆に日本はどうでしょうか。1980年以降、経済成長は横ばいのまま。
私たち国民のお給料も、そう上がっているという実感がない、というのが現状でしょうか。
しかし、日本の経済を危ぶんでいるから、自分たちのお金の置き場所を、現金・預金にしておくというのは、また別の話のような気がします。
どうして、現金・預金では危ないのか?
そもそもの話に立ち返ったときに、私たちの行動を少しずつでも変えていく必要が、あるのではないでしょうか?
お金に働かせることの意味
しつこいようですが、金融庁の、「家計の金融資産構成」のレポートには続きがあります。
それは、過去20年で、家計全体の金融資産がどのように推移したか、というものです。
日本の場合、
全体の金融資産は1.47倍、
アメリカの場合は、3.1倍、
ユーロ圏では、2.8倍です。
どうしてこのような差が生まれたのか?
この理由はもうすでにわかると思いますが、金融資産の構成の違いによる、運用リターンの差ということになります。
日本ではやっと最近、NISAやつみたてNISAという、国の制度が話題になるようになってきました。
アメリカでも同様の制度がありますが、それは、1970年ごろくらいから存在していたそうです。
ですので、決して高収入でない家計においても、収入を少しずつ投資に回すことで、資産を大きく増やすことに、成功しているのでしょう。
もちろん、経済状況の違いや、投資対象の選び方など違いがあるため、ここ数十年のアメリカでの成功事例を、同じように再現できるとは限りません。
しかし、人口構成の変化により、日本の将来も消しって明るいとは言えません。
アメリカのような、投資に対する姿勢を見ながら、自らお金に働かせるように、行動をしていくといいでしょう。
何も、投資を始めるからと行って、日本の企業に投資しないといけない理由はありません。
投資先は世界を見渡せば、かなりの数が存在まします。
まずは、少しずつ行動することから始めていきましょう。
まとめ
日本においても、モノの値段がどんどん上がっています。
そのニュースを見て、私たちの行動をどう変えていくべきか、考えていく必要があります。
アメリカの人々は、自分たちのお金の置き場所を変えました。
そして、その結果、モノの値段が上がっても、お金が減らない資産を持つことができました。
さて、私たち日本人は何から始めるべきでしょうか。
私たちのお金に対する考え方を、ちょっと立ち止まって、考えるきっかけになればと思います。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
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