これまで一度は、マズローの欲求のピラミッド図を見たことがあるのでないでしょうか?
最近では、経営学にも応用され、人は自己実現に向かって絶えず成長する、という仮説をもとに作られた理論です。
この理論は、自分のことを深く知るためにも、多いに役に立ちます。
5つそれぞれの欲求に合わせて、もう1つの視点から、欲求について学ぶことで、より深く理解できるようになります。
ぜひあなたも、自己実現のために理解を深めていきましょう。
アブラハム・マズローとは?
マズローの法則を知るうえで、まずご紹介したいのが、法則の名前にもなっている、アブラハム・ハロルド・マズローです。
アメリカの心理学者であるマズロー氏は、ニューヨークのブルックリン区に生まれ、研究者として、まずはサルを対象にして、人間と動物を区別しない、「行動主義心理学」の研究をしていました。
その後、精神病理の理解を目的とする、「精神分析」と「行動主義心理学」の間の第三の勢力として、人間の自己実現を研究する、「人間性心理学」を提唱しました。
マズローの法則は、1943年に論文、「A Theory of Human Motivation」によって提唱されました。
現在では、人間心理学のもっとも重要な生みの親とされており、マズロー欲求のピラミッドを主張したことで良く知られています。
この、マズローの法則ですが、5つの段階になっていることはよく知られていますが、欲求そのものに関しても、いくつもの特徴や種類がありますので、それらを詳しく紹介していきましょう。
欲求の5段階とは?
マズローの法則では、5つの優先順に並んだ欲求があり、低いものから順番に現れ、その欲求がある程度満たされると、次の欲求が現れるという流れになっています。
そして、どの階層の欲求に取り組んでいるかということと、その人の健康度は比例するといわれています。
また、私たち人間は、欲望を持つことを悪いことだと思いがちです。
マズローによると、人間が一定して持つ基本的な欲求から生まれる欲望は、決して悪ではないと言われています。
欲求を抑えるよりも、引き出して満たしたほうが、より健康になり、より生産的になり、そしてより幸せになることができると、考えられています。
それでは、順に各欲求について解説していきましょう。
生理的欲求
生理的欲求は、人を動機づける最も根源的な欲求です。
それは、酸素、食物、飲料、性、睡眠といった、人の生命維持に関わるものがそれにあたります。
日本においては、三大欲求して表現される、「食欲、性欲、睡眠欲」の部分にあたります。
もし、睡眠不足や食生活で満足できていないと、人間の機能としていろいろな障害が生まれます。
ですので、まず持って満たされなければいけない欲求といえます。
この欲求がある程度満たされると、次の階層である、安全欲求を求めるようになります。
安全欲求
この安全欲求は、
・身の安全
・身分の安定
・他人への依存
・保護された気持ち
・不安・混乱からの自由
・構造・秩序・法・制限
を求めるのが安全欲求です。
より簡単に言うと、「衣・食・住」の衣と住の部分です。
マズローによると、生理的欲求と同じくらい、安全の欲求は強いものだとされています。
所属と愛の欲求
生理的欲求と安全欲求が満たされると、所属と愛の欲求が現れます。
・孤独や追放された状態を避ける
・家族や恋人、同僚など共同体の一員になりたい
・周囲から愛情深く迎えられたい
このような感情が、所属と愛の欲求です。
人は安全が確保されると、自己を表現したくなるといわれます。
「自分とは何者か?」というアイデンティティの形成を図り、他人と繋がろうとします。
それができず、孤独を感じたり仲間外れにされると、不安を感じることになるのです。
この所属と愛の欲求がある程度満たされると、次の階層は、承認欲求を求めるようになります。
承認の欲求
承認欲求は言い換えると、尊厳の欲求や自尊心の欲求とも呼ばれます。
この承認の欲求は2つに分かれるといいます。
1つ目は、他者からの評価に対する欲求です。
評判や信望、地位や名誉、優越、承認、重視などを求める欲求を言います。
2つ目は、自己の自己に対する評価の欲求です。
強さや達成、能力への自信、独立や自由など、自己をより優れた存在と認める、自尊心ともいえるものへの欲求です。
マズロー氏は、他者承認のレベルの欲求にとどまることは危険だとしています。
これらの承認の欲求が満たされると、自分は世の中で役に立つ存在だ、という感情が湧いてきます。
それが逆に満たされないと、焦燥感や劣等感、無力感などの感情が現れます。
自己実現の欲求
最後に、承認欲求がある程度満たされると、「あるべき自分になりたい」という欲求が生まれ、これが自己実現の欲求の現れとなります。
この段階の欲求は、無償性を含んでおり、
「偉大な発明をして、人類に貢献したい」
「ボランティアをして、社会に貢献したい」
という思いがそれにあたります。
この自己実現の欲求こそが、マズローの欲求5階層説の中核的な概念だといえます。
最終的には、すべての行動の動機が、この欲求のために行われるとされています。
このような自己実現欲求を求める人は、自分の成長のための投資を惜しむことはありません。
そのため、間違った自己啓発を受けると、詐欺被害など大きなダメージを受けることにも繋がりかねませんので、注意が必要です。
欲求の分類
これまで紹介してきた、5階層の欲求ですが、より深く理解するためには、欲求を分類することがポイントです。
物質的欲求と精神的欲求
1つは、物質的な欲求の側面と、精神的な欲求の側面から考えてみましょう。
5階層の内、第1階層と第2階層である、生理的欲求と安全欲求までは、いわゆる物質的欲求の範囲です。
モノを所有したり、使用したりすることで、欲求が満たされることを意味します。
お腹が減ったから何か食べたいとか、夏の暑さをしのぐためにクーラーを使う、といった欲求は、モノを手に入れたり、使ったりすることで満足できます。
第3階層の所属と愛の欲求からは、精神的欲求の範囲になっていきます。
モノによって満たされる段階を超えると、社会生活の中で、精神的な満足度を得ることが、重要と思うようになります。
友人と一緒に旅行するという体験、職場で上司に褒められること、目標を達成するという喜び、これらは、精神的な満足を味わうことができます。
外的欲求と内的欲求
更に欲求を分類すると、外的欲求と内的欲求という分類ができます。
第1階層から第3階層までが、外的欲求の範囲といえます。
自分以外の外部を満たそうという欲求です。
例えば、持ち物や生活環境を充実させることや、友人や恋人を作ること、職場間の人間関係をよくすることなど、自分のこと以外のことが満たさせることを意味します。
反対に、内的欲求は、第4階層の承認の欲求からは、内的欲求の範囲となります。
外部の欲求を満たされる段階を超えると、自分自身の内面を満たすことを考え行くようになります。
自分に自信を持ったり、自分が掲げた目標を達成すること、そのうえで、他人に貢献すること、このような事を満たすことを意味します。
欠乏欲求と成長欲求
3つ目の分類として、欠乏欲求と成長欲求があります。
欠乏欲求とは、5階層の内、第1階層から第4階層までを指します。
自分に足りないからこそ、外部から得ることで満たそうという行動の動機です。
欠乏を満たすためには、他人に依存したり、執着したり、衝突を引き起こすこともあるとされます。
逆に言えば、他人に依存し続ける限り、欠乏欲求化からは抜け出すことができません。
更に言うと、一度満たされた欠乏欲求は、それ以降はモチベーションを高めるための理由には、なりにくいです。
例えば、街で一番おいしいといわれるステーキを、お腹いっぱい食べた経験がある人に、そのステーキを食べさせるという条件で、がんばろう言うといっても、やる気は出にくいということです。
その次の段階は、成長欲求です。
第5階層の自己実現欲求が成長欲求の範囲といえます。
自分が満ちているからこそ、自己成長や他人の援助に目を向けるという行動の動機になります。
自分自身の成長への欲求は、満たされれば満たされるほど関心が増していくため、永遠に求め続けることができます。
しかし注意すべきこともあります。
それは、自分では成長欲求だと思っていても、実際は、欠乏欲求だということがあります。
例えば、あなたがサッカー選手だとします。
試合でうまく活躍できなかった理由を、チームメイトや審判のせいにしたり、ピッチコンディションのせいにしていたら、それは他者や外部に依存していることになり、成長欲求ではありません。
欲求の順番について
5階層の欲求の段階と、欲求の分類を解説してきました。
ここで、マズローの5階層の順番について、少し詳しく解説していきます。
よく見るピラミッドの階層図を見ると、欲求の優先順位が一目瞭然のように見えます。
しかし、実はこの欲求の優先順位は、固定的なものではありません。
マズローも指摘していますが、5つの欲求の階層は、不動のものではなく、人によっては微妙に違いか見えられることを忘れてはいけません。
例えば、自己実現のために行われる、創造という行為が、三度の飯より好きという人がいます。
ゴッホなどの美術家はその典型で、生理的欲求よりも、自己実現欲求が強い人だと言えます。
基本的には、下位の欲求から満たされ、上位の欲求が現れてきます。
しかし、下位の欲求が満たされるはずないと、諦めたときにも、上位の欲求が現れてくることもあるということです。
今の自分の欲求はどの位置か?
最後に、このマズローの欲求階層を、自分の生活に生かすためには、どう欲求と向かい合えばいいのかを考えていきます。
まず大切なことは、自分が今どの階層にいるのかを考えることです。
承認の欲求が満たされていないときは、どうやったら周りに認められるか?と、考えるといいでしょう。
満たされていると感じるのであれば、どうすればもっと成長できるだろうか?という、自己実現の欲求に従っていきます。
自分の感情がどのようなことに向いているか、しっかりと見つめることで、どの階層にいるのかわかってきます。
毎日の食事をしっかりしたいのであれば、生理的欲求の段階です。
安心できる場所に住みたいのであれば、安全の欲求を求めています。
彼女が欲しいと考えるのであれば、所属と愛の欲求です。
他人からちやほやされたいという思うなら、承認の欲求。
自分を表現したいと言考えるのであれば、自己実現の欲求となります。
このように、自分の感情から、自分の欲求は何か?に、真正面から向かい合わないといつまでたっても同じ階層にいるまま、どうしたら幸せになれるのか?と思い続けることになりかねません。
ぜひこのピラミッドを上手に活用し、自分の欲求に向かい合ってみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?このマズローの5階層の図は、プライベートにおいても、仕事においても大いに役に立ちます。
ただ、自分がどの階層にいるのか、時間をかけて自分を見つめなおす機会が少ない現代において、まずはそのような時間を確保することが、第一かもしれません。
人は誰でも幸せになりたいと考えます。
ぜひこの機会に、自分の欲求に向かい合い、より幸せな人生を歩むきっかけとなれば幸いです。
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