今年に入って、30円近く円安が進んでいます。
9月8日、円相場は1ドル=145円に迫り、1998年以来24年ぶりの円安水準を記録しました。
アメリカの金利引き上げが原因といわれるが、そのほかにもいろいろなことが原因で、さらなる円安が進みそうです。
このまま円安が進むと、どのような影響が出るのでしょうか?
また、この円安傾向を見て、外貨による資産形成を考える人も増えています。
その選択が果たして本当に良いのか、まずは、円安、円高の基本を押さえていこうと思います。
いまさら聞けない円高と円安
よくテレビなどのニュースで、
「本日の円相場は、、、」
という報道を聞きますね。
私たち日本人が、日常使うお金の通は「円」ですが、この「円」を、外国の通貨に変える際の交換比率を、「為替相場」といいます。
円やドルなど、通貨間の交換比率は、需要と供給の関係で決まります。
よって、需要関係が変動すれば、為替相場は変動します。
日本も世界との貿易取引など、経済活動を行っています。
世界には様々な通貨があり、取引をするには「円」を、外国の通貨に変える必要があります。
円を外貨に換える需要より、外貨を円に換える需要が多ければ、円が買われるとともに外貨が売られ、「円高」となります。
より具体的に言うと、1ドルで売られているコーラが、昨日は105円だったものが、今日は104円になっているとしたら、1円円高になったといわれます。
1ドルの価値が105円から104円に下がったことを、ドル安=円高になったということです。
このように、円とドル以外でも、その交換比率は、需要と供給の関係で決まりますので、需要関係が変われば、為替相場も変動するというわけです。
円高と円安の影響
為替相場の変動は、私たちの生活にどう変化を与えるのか、このようなことはあまり考える機会はないと思います。
今この変動が激しい時期に、少し考えてみましょう。
今日本は、円安傾向ですが、円安のメリットは、日本の製品を海外に輸出する場合に、海外での価格が下がることで、輸出産業が好調になる傾向があります。
また、外貨建ての資産価値が高まるというメリットもあります。
一方、円安のデメリットは、外国の商品が高くなるということです。
また、海外へ投資資金が出ていくことで、債券や株価の価格が下がるという傾向もあります。
円高になると、この逆の現象が起こります。
円の価値が上がるため、円の購買力を国際的に引き上げ、輸入品を通して、国内の物価を引き下げるという効果があります。
外国製品が安く買えたり、海外の投資資金が入ってきて、債券や株価の価格が上がる傾向があります。
いま日本に起こっている円安ですが、この原因は、日本とアメリカの金利差だと言われています。
これは一体どういうことでしょうか?
日本銀行は、短期金利をマイナスに、長期金利を0%近くにするという、金融緩和政策を今後も続けると言っています。
アメリカの中央銀行FRBは、21日の会合で、0.75%の大幅な金利を決定しました。
これで3回目の大幅な利上げですが、アメリカの狙いは、記録的にインフレを抑えることです。
これで、政策金利が約3%となったわけですが、この日本との金利差は、どう影響するのでしょうか。
お金を預けるときに、金利が0%の銀行と、3%の銀行、あなたはどちらに預けるでしょうか?
単純にこの金利差では、3%の銀行に預けるのが必須でしょう。
これにより、円が日本から流出し、ドルが買われるという結果になっています。
ここで円安の恩恵を受けるのが、輸出関連企業です。
日本国内で製造せれた製品は、海外では割安で購入できるため、売れ行きが良くなる傾向があります。
しかしながら、輸出が少ない産業にとっては、円安はただのコストの増大となります。
私たちの生活にも大きな影響があります。
今私たちの身の回りには、輸入品が多くあります。
特にエネルギー関連、食品関連はその多くを輸入に頼っている現状です。
それぞれコストの増大になりますので、それを買う私たちへの影響は大きく、家計の負担も大きくなるという、悪い影響をおよぼしています。
歴史に見る為替の行方
「プラザ合意」という出来事をご存じでしょうか?
1985年9月22日、当時のG5、日本からは竹下昇大蔵大臣が出席しました。
当時、財政赤字と貿易赤字の二つに、悩まされていたアメリカですが、ドルの価格変動が、世界経済の懸念要因となっていました。
アメリカの貿易赤字の大半が、日本との貿易によるもので、その赤字削減のために、為替を円高ドル安に誘導するという、きわめて一方的な会議だったといわれています。
この発表からわずか1日で、為替レートが、1ドル=235円から20円も円高へ、翌年7月には、150円台にまで円高が進みました。
それからというもの、日本においては円高の一途をたどるという、歴史を歩んでいます。
今回145円台に突入したのも、実に30年ぶりということです。
このような事実を見ていくと、為替相場は、需要と供給の関係で決まるとお伝えしましたが、それ以外にも、国と国の力関係、世界との力関係でも決まる、といえるのではないでしょうか。
まとめ
この円安の状況について、その動向に関する論議が多く交わされています。
私たちに入ってくる情報は、ほんの一部かもしれませんが、さきにお伝えしたプラザ合意のように、国同士の力関係で、ガラッとその傾向が変わったという歴史を見ると、今後の為替動向も、なんとなく予想ができるのではないでしょうか。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
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