資産運用の重要性が、少しずつ世間に認知されてきました。
政府が言う、「国民総株主」などという言葉もできてきて、そろそろ本格的に始めてみよう、という方は多いと思います。
個人における資産運用は、株、投資信託、不動産など、様々な投資先があります。
しかし、それよりも私たちに身近な、生命保険という商品においても、資産運用ができるものが存在します。
保険業界においては、米国株が過去最高値を更新するという、世界経済情勢などを背景に、変額保険、外貨建て保険は、特に新商品が増えているようです。
今回はそのうちの、変額保険について少し考えてみます。
果たして、変額保険で資産運用は可能なのか、デメリットはないのか、解説していきましょう。
保険商品による資産運用について
結論から言いますと、保障と資産運用は別々に行う方が、効率がいいと言えるでしょう。
その理由は、2つです。
1つは、あたりまえですが、保険商品はあくまでも保険ですので、保険化する分のコストが、割高になっている点です。
保険の販売資料を見てみるとわかりますが、どのようなコストがいくらかかっているかは、契約者が判別できないようになっています。
もう1つは、NISAやiDeCoなどの、投資非課税制度に比べると、税制面で不利な点です。
NISAやiDeCoは、運用益分の税金が優遇されることが、最大のメリットですが、変額保険にはそのような優遇はありません。
その分、生命保険料控除という制度はありますが、運用益などを考えると、非課税制度の方がメリットが大きいでしょう。
変額保険の特徴
ここで変額保険のおさらいをしてみましょう。
変額保険とは、資産を株式や債券を中心に運用し、運用の実績によって、保険金や解約返戻金が増減する保険です。
タイプは大きく分けて2つあり、保険期間が一定の「有期型」、一生涯保証が継続する「終身型」です。
死亡したときには、基本保険金に、変動保険金を上乗せして受け取れます。
基本保険金額は、運用実績に関わらず保証される部分です。
変動保険金がマイナスになったときにでも、
基本保険金額分は受け取ることができます。
有期型の場合は、満期を迎えると満期保険金を受け取ることができますが、その金額は、資産運用の実績で変動し、この部分については死亡保障のような、最低保証はありません。
将来受け取ることができる満期金や、解約返戻金は運用実績次第ということです。
変額保険を考える際の注意点
変額保険の運用先は、株式もしくは債券が中心だとお伝えしました。
要は、投資信託と保障のセット商品になります。
この構造を考えると当たり前ですが、変額保険には、投資信託には存在しないコストが発生します。
そして、このコストの部分が、変額保険を考える際に、特に注意すべきポイントになります。
逆に言うと、各保険会社が、それぞれの保険会社の特徴を出すために、力を入れている部分ということです。
冒頭にお伝えしたように、資産運用と保障は別に考える方が効率的です。
その点を念頭に置いて、自分にとって必要かどうかを、見極める必要があります。
必要かどうか、見極めるべきはやはり「保障」についてです。
この「保障」の部分について、各保険会社が力を入れています。
「保障」の種類としては、死亡保障、がん保障、心疾患・脳疾患保障、そして介護保障などです。
これらの保障を、投資信託と合わせて商品化することで、「掛け捨て保険はもったいない」と考える方に勧めやすくしているようです。
これまで長く保険に加入している人は、ご存じかもしれませんが、保険商品というのは、どんどんリニューアルしていきます。
それは、公的保障やそのほかいろいろな事情で、保険商品として使えなくなってくるからです。
保険金を受け取る条件もどんどん変わっています。
一方、資産運用は長い時間をかけて行うものですが、同時に、長く同じ保障を持ち続けることは、将来不要になる可能性があるモノに、お金を払い続けるということです。
このコストを、無駄と思うのか、万が一に必要な保障と考えるのか、しっかりと考える必要があると思います。
まとめ
私たち日本人の保険加入率は、約90%とほとんどの人が加入しています。
一方、日本の健康保険制度などの公的保障は、かなり充実していると、海外のものと比べるとはっきりとわかります。
国の政策で、NISAやiDeCoを活用する人が増えていますが、よりリターンが大きい資産へ、お金の置き場所を変えていくことを考えれば、そろそろ保険への加入の是非も、しっかりと考える時期なのかもしれません。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
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