昨年末から、なおも引き続き起こっている、株安。
多くの方が注目しているアメリカの株価は、一体どこまで下がっていくのだろうと、投資家の感情は、大きく揺さぶられています。
一方、今は大バーゲンと、割安になった株を、買い求める投資家がいるのも事実。
上がったり下がったりする株価の動向は、誰にも予測できませんが、いま私たちにできることは、冷静に経済の動きを見てみることです。
今だからこそできる学びとして、この経済の仕組みを少しひも解いてみましょう。
金利と株価の関係
将来の株価を予測することは、無理です。
ただし、経済の仕組みを知り、それをもとに、冷静に経済の動きを見て、予測のための判断材料を集めることは可能です。
昨年末から、株価が下がっている今、経済の動きを見ながら、どういう理由で下がっているのかを、確認してみたいと思います。
株価が下がっている原因の一つに、アメリカの金利上昇が考えられます。
2022年3月14日、アメリカ債券市場で、長期金利の指標になる、10年国債利回りが2.1%に上昇しました。
アメリカの金利は、リーマンショック後の金融緩和で、2007年には5%だったものが、2008年末には0.25%にまで下がりました。
その後、2015年までその水準を維持してきました。
それから、数回の金利引き上げをが実施され、現在に至ります。
まず、金利が低い場合に、企業や個人はどのような行動をとるのでしょうか?
企業は、お金を会社に貯めこんでいても、大きな利益にはならないため、お金を低利子で借りて、それを事業で回そうとします。
具体的には、人件費や仕入れなどの運転資金や、設備投資のための資金を調達しやすくなります。
個人についてはどうでしょうか?
個人についても同様で、住宅などの大きな買い物も、安い金利で住宅ローンを組むことができますし、低金利で銀行にお金を置いていても、資産は増えないため、株や金利の高い商品などに、投資する傾向が強くなります。
政府も、金融緩和政策などを行うことで、市場には多くのお金が出回るようになります。
そうすると、私たちの購買意欲も高まりますので、徐々に経済活動が活発になります。
こうなると、景気が良くなっていき、企業はものを多く生産し、設備投資をしていくため、企業の業績は次第に良くなっていきます。
株価は、企業の業績と直結してるため、株価も上がっていくという仕組みです。
しかしながら、景気は好不況を繰り返していきます。
企業などの設備投資意欲が高まると、一般的にはそのための資金需要が高まるため、銀行などは金利を上げていくことになります。
政府の金融政策も、引き締めに動くため、金利が上昇していくことになります。
この金利上昇が及ぼす影響として、企業の借り入れコストが上昇するため、設備投資などの縮小が行われていきます。
個人においても、住宅ローンの金利が上昇することから、住宅購入を見送ることも考えられます。
要は、企業、個人の経済活動が縮小していくことで、不景気へとなっていくことになります。
このように、金利が低くなると、景気が良くなり、その結果、株価が上昇、逆に、金利が高くなってくると、景気が悪くなり、株価が下落ということになります。
債券と株価の関係
アメリカの長期金利の基準となる、10年国債の金利が上昇していることが原因で、株価が下落しているということをお伝えしました。
ここで、債券と株価の関係をおさらしましょう。
まず、債券とは、国や企業が資金を調達するために発行する、「借用証書」のようなものです。
国が発行したものは「国債」、企業が発行したものは「社債」です。
満期まで一定の利子を、定期的に受け取ることができ、満期を迎えると額面の金額が返ってきます。
株式とは、債券と同様、株式会社が資金を調達するために発行するものです。
売買益や配当で、利益を得ることができます。
債券のように満期はないため、期限なく保有することができます。
債券と株式は、どちらもリスクがあります。
債券のリスクは、金利の変動によるものが大きく、政策金利の変更によって、利上げや利下げが行われることで、市場金利が高くなったり低くなったりします。
金利が上がると、保有している債券の価格は下がり、金利が下がると債券の価格は上がります。
株式はというと、価格変動いうリスクがあります。
企業独自の業績によるもの、または、諸外国の経済状況など市場全体の影響を受けるもの、この2つがあります。
この債券と株式の値動きには、相関関係があります。
一般的には、債券価格が上がると株価は下がり、債券価格が下がると株価は上がるといわれます。
今後の株価
冒頭お伝えしましたが、将来の株価は誰にも予測できません。
ですが、経済の仕組みを少しでも学ぶことで、冷静に経済を見る目は養えると思います。
今回の、アメリカの金利上昇による、株価下落に関しても、一般的な金利と株価の関係を知っていれば、慌てずに対処できるのではないでしょうか。
株式投資で失敗する人の多くは、短期的な売買によるものです。
短期的な売買の場合、自分の利益は誰かの損失になり、逆に、自分の損失は誰かの利益です。
上がったり下がったりする株価の変動で、冷静に経済活動を見ることができなくなり、慌てて売却してしまうためです。
株式投資は、含み損を抱えるリスクはありますが、長期的に保有するということであれば、長い時間をかけてゆっくりと投資していけば、リスクは小さくなることが、多くのデータにより証明されています。
私たちは、このような過去の事実や、冷静に経済活動を見る目を養うことが大切です。
まとめ
上下を繰り返す経済活動を見て、感情に振り回されないようにすることが、どれだけ大切かお伝えしてきました。
最後に、株式投資の神様といわれる、ウォーレンバフェット氏の言葉を、ご紹介します。
「10年待てないなら株を買ってはいけない。」
このことが、すべてを語っているのはないでしょうか。
今この株価が下がっている状況を、バフェット氏ならどう捉えているでしょうか?
それを考えることで、株式投資においてさらなる学びが得られそうです。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
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