世界との差を知ろう。金融教育の遅れがもたらした日本の悪い現状とは

世界との差を知ろう。金融教育の遅れがもたらした日本の悪い現状とは金融・投資

2024年に行われるNISA制度の改正に伴い、その内容が拡充されるのか、期間が延長されるのか、様々憶測が飛び交っています。

どちらにしても、現状の内容よりも良くなることは、間違いないでしょう。

このように、日本政府も国民の資産運用を後押しする今、私たちの資産運用に対する知識を、どう高めていくかも、課題に挙がっているようです。

日本は金融教育が遅れているといわれますが、現状どうなっているのでしょうか?

海外の金融教育はどうなっているのか、比較しながら、その必要性について考えてみましょう。

日欧米の金融リテラシーの違い

日本政府が、株式投資などの資産運用を促しているのは、いくつか理由があるかと思いますが、その理由の一つに、金融先進国と比べて、金融リテラシーの低さがあると思います。

また、歴史的に見て、日本政府が推進してきた貯蓄政策のしっぺ返しが、今になって出てきているということも挙げられます。

それを表すデータが、日本銀行が発表している、「資金循環の日欧米比較」というデータです。

このデータでは、それぞれの国における金融資産の内訳が、公表されているのですが、特に顕著なのは預貯金の割合です。

日本の金融資産構成で、ほとんどの割合を占めているのが、現金・預金となっています。

投資信託や株式といった金融資産は、わずか1割程度です。

欧州・アメリカはどうかというと、ほとんど日本と逆の構成になっています。

現金・預金が1割程度、ほとんどの金融資産が、投資信託や株式などの、いわゆる資産運用の資産になっています。

戦後、日本は高度経済成長にて、1960年ごろから好景気が続きました。

それからバブル崩壊まで、その当時の定期預金の金利は、なんと4%~7%ほどありました。

給料やボーナスは増額され、それを銀行や郵便局に預けるだけで、高い金利で運用されていたのですから、わざわざ株式投資などをする人も、少なかったといえます。

ただ、金融機関にお金を預けておきさえすれば、お金が増える時代はすでに終わり、低金利時代を生きる私たちにとっては、自分の将来の金は、自分で考えないといけない時代になりました。

これまで、日本政府が行ってきた、働いていたお金は貯蓄へという政策は終わり、今掲げている、「貯蓄から投資へ」という政策に伴って、それに対応するだけの金融リテラシーをつける必要が出できました。

諸外国の金融教育

日欧米の金融教育の差は、先ほど紹介した、「資金循環の日欧米比較」の中にあるデータを詳しく見ると、さらによくわかります。

その一つに、家計金融資産が、1995年から2016年の約20年の間に、どれだけ増えたかというデータがあります。

日本は1.54倍に増えたのに対し、アメリカはなんと3.32倍。

その中の、運用リターンによる増加率は、日本が1.2倍に対して、アメリカは2.45倍です。

これは、資産運用をしているか、していないかの差が、家計資産の増加に影響があることを、表していますが、そのための知識習得の場があるかどうかが、とてもネックだといえます。

日本ではご存じのように、こういったお金に関する勉強をする機会は、子供のころからはありません。

一方、欧米諸国については、きちんと子供のころから金融教育が、施されているという現状があります。

アメリカにおいては、1980年代に金融自由化が開始されましたが、それまで消費者の金融知識や判断力は、それほど高くなかったようです。

そのため、金融教育普及への関心が高まり、1990年代後半には、消費者向けの金融教育プログラムが急増しました。

過去に起こった、サブプライム問題では、金融教育を受けていなかった層の人たちが、次々と破綻してしまいました。

より多くの人に金融教育の機会を与えるため、学校などでの導入が拡大していきました。

ただ、子供への金融教育は各州に委ねられており、そのため、統一したカリキュラムはありません。

それでも、学習ゲームや体験ゲームなどにより、お金の扱い方の知識は習得できるような、カリキュラムが組まれているようです。

イギリスは、金融教育発祥の国だといわれています。

国と民間団体、企業が連携し、金融教育を実施する教師をサポートしているようです。

子供名義の貯蓄、投資制度であるジュニアISAは、税制の優遇を受けられる制度であり、日本のNISAの制度のもととなっています。

学校でのカリキュラムは、小学校高学年から高校生まで、すべての学年ごとに、体系的に学べるものになっています。

中学生や高校生になると、限られた予算内で学校行事を企画するなど、収支の概念を学んだり、職業選択の違いが将来的な金銭利益に影響すること、金銭では計れない報酬や、充足感などもあることを学ぶそうです。

金融教育の必要性

金銭教育の必要性は、冒頭お伝えした、資産の増加の差が、世界各国と比べて大きいということにあります。

このように世界各国と差がついてしまうのは、日本の金融教育が後れを取ってしまっているからです。

このまま日本が何もしないでいると、世界各国との差は開く一方です。

ただ、日本政府もそれらについては、既に施策を打ち出しており、2022年から高校の授業において資産運用について、学ぶ機会も出てきています。

少しずつですが、このような子供のころからの金融教育が広まることで、日本政府が掲げる、「貯蓄から資産運用へ」がより多くの日本人に浸透していくでしょう。

まとめ

2024年から新しいNISA制度がスタートします。

かなり改善されたこの制度は、これから私たちが将来のお金の心配をなくすためには、必ず使わないといけない制度です。

ただ、このような資産運用への関心をどういう風に、日本人に持たせるかということも課題でもあります。

日本人が昔から持つ、資産運用へのイメージを払しょくすることから、日本政府は始めて行くべきだと考えます。

ライター馬込 八寛

生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。

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