私たちは、何か新しいことを始める際には、まず最初に、取扱説明書、ルールブック、参考書など、ある程度の「決まり」を知りたいと思います。
資産運用という、その動きがわからないものに対しても同様で、ある程度のルールや、道しるべがあるととても安心します。
資産運用においては、この道しるべともなるルールについて、ノーベル賞までも受賞している理論があります。
資産運用はとても難しい、それは当たりまえのことです。
なにせ、資産が増えたり減ったりする原因は、私たち人間の力で動かすことができないものも多くあるからです。
それでも、ある一定のルールがあるとしたら、ひとまずそれを知り、参考にしたいものです。
ぜひ、この理論については、まずはどのようなものが知ることから、始めていきましょう。
投資のよくある勘違いとは
資産運用をスタートして、日々変動する価格に一喜一憂するというのは、誰しもが経験したことではないでしょうか。
特に、昨年末からの株価の乱高下は、さらに私たちの感情を揺さぶってくるので、どれだけ冷静に判断できるかは、資産運用する側としてはポイントでしょう。
このように資産運用をしていると、いろいろな学びがありますが、リスクとリターンの関係について、
「大きなリターンを期待する場合は、それに対するリスクも増える」
ということを、聞いたことはあるでしょうか?
例えば、年1%と年20%のリターンを期待する場合、20%のリターンを期待する場合のほうが、リスクは高まります。
それは当然の話なので、なるほどと理解できますが、
例えば、年5%と年7%のリターンを期待する場合、どの商品を買うかによって、年5%のリターンを狙う投資のリスクよりも、年7%のリターンを狙う投資のリスクの方が、小さいということがあるのです。
よく、
「リスクとリターンは比例関係」
と考えている方が多いのですが、実はこれは不正解です。
商品の組み合わせ、つまりポートフォリオを適切に選ぶことで、リターンを一定にしつつ、リスクを小さくすることはできるからです。
これを可能にする考え方に、
「現代ポートフォリオ理論」
があります。
これから資産運用をするにあたって、一度は聞く名前だと思いますので、既に知っている人にはおさらいの意味で、勉強していきたいと思います。
現代ポートフォリオ理論とは
現代ポートフォリオ理論とは、アメリカの経済学者、ハリーマーコウィッツ氏によって、提唱された理論です。
「リスクを抑えながら、一定のリターンを期待するうえでは、ポートフォリオとして多数の銘柄や、複数の資産に分散投資することとが有効」
という理論ですが、1990年にこの理論により、ノーベル経済学賞を受賞しました。
この理論は、あるリターンを期待するときに、リスクを最小化するようなポートフォリオを、作ることを目的に作られています。
そして、この理論には3つの特徴がありますので、解説していきましょう。
1つは、「分散効果」です。
投資の格言としても有名ですが、
「すべてのたまごを、ひとつのカゴに盛るな」
というものがあります。
これは、卵を資産、カゴを運用先に見立てて、投資先を一つにしておくと、その一つがダメになった場合には、すべての資産がダメになってしまう、ということを意味します。
マーコウィッツ博士は、予め複数の資産に、資産を分散しておくことで、より確実にリターンを得ることとがか可能になることを証明しています。
もう1つは、「相乗効果」です。
リスクを減らすことを目的にした場合、投資先を増やしたとしても、それぞれの資産が、同じような値動きをしていれば、リスクを軽減することはできません。
例えば円安になったときに、価格が下落しやすい、輸入関連の企業の株を複数保有しているだけでは、それぞれの損失をカバーできず、リスク軽減にはなりません。
輸出関連、輸入関連それぞに、分散投資しておくことで、何らかの事象が発生した場合に、お互いをカバーできる銘柄を持つことで、リターンを変えることなく、リスクを減らすことができます。
「分散投資」と「相乗効果」の2つをもとに、最適な組み合わせの投資先を選ぶと、最大のリターン、そして最小のリスクを実現する組み合わせを見つけることができるというものです。
これが3つ目の、「効果的フロンティア」といいます。
ハリーマーコウィッツ博士によると、この効果的フロンティアを超える投資は存在せず、これを下回る投資は合理的ではない、ということです。
現代ポートフォリオ理論の欠点とは
このように、ノーベル賞をも受賞した、ポートフォリオ理論を紹介しましたが、実際に自分にあてはめて行う場合には、注意が必要になります。
それは、無限にリスクを軽減できるものではない、ということです。
どういうことかというと、分散効果や相乗効果を利用して、リスクの軽減はできても、それには限界があるということです。
例えば、海外の市場の動向や、市場金利の上昇、下落、政府要人の発言、失言、自然災害など、によって、資産の価格は大きく変動します。
企業に起因したリスク変動ではなく、市場に起因するリスクであるため、分散投資によって、回避できるリスクではありません。
このように、市場そのものに存在する、なおかつ、私たちの手ではどうすることもできないリスクを、どうとらえるのか、これは理論では解決できない、大きな欠点だといえます。
まとめ
世の中に、絶対という言葉はありません。
ただ、資産運用の場合で言うと、大きな道しるべとして、
「現代ポートフォリオ理論」
のようなものがあると、参考にして進めることができます。
私たちの将来の安心のため、いざ資産運用を始めるというときには、学びのきっかけにしてもらいたいです。
ライター馬込 八寛
生命保険、損害保険業界を約15年経験した後、お客様にとって最適な金融商品を提供するため、IFA(独立系金融アドバイザー)へ転身。「資産を1円でも多く増やすためのアイデア」を一人でも多くの人へ伝えるために、日々奔走。来年から始まる高校での授業「投資教育」にて教壇に立つことを目指している。
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